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APS-C用のレンズをクロップさせずにEOS Rで使いたい

APS-C用のレンズとは

APS-C用のレンズとは、その名の通りAPS-Cサイズのセンサーを搭載したレンズ交換式カメラ専用に設計されたレンズです。従来の35mmフルサイズセンサーを搭載したカメラに向けて設計されたレンズよりも比較的安価であったり、軽量・小型であったりというメリットがあります。通常、フルサイズ用のレンズをAPS-Cのボディで使用しても問題なく撮影することができますが、APS-C用のレンズをフルサイズのボディで使用すると四隅がケラレてしまいます。APS-C用のレンズではイメージサークルが小さくなっているので、像からセンサーがはみ出してしまうのです。

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Tokina116をEOS Rに装着して撮影(広角端)

参考

logcamera.com

EF-Sマウントとは

オートフォーカス技術の登場以降、1987年からCanonの一眼レフカメラのマウントとしてはEFマウントが用いられています。一方、センサーを使用したデジタル一眼レフの登場により、入門機などに用いられるAPS-Cセンサーが台頭することとなります。2004年には上記のような小型軽量、安価と言ったメリットを満たすためにAPS-C用にEF-SというレンズシステムをCanonは発表しました。後玉の構造が従来のフルサイズ向けのレンズとは異なっており、フルサイズ機には物理的に装着できない構造になっています。

参考

www.monox.jp

APS-C用レンズ=EF-Sではない

ここで注意したいのはAPS-C用レンズが全てEF-Sのようにフルサイズ機に装着できない構造になっているわけではないという点です。筆者が知る限りEF-Sのレンズを製造しているのはCanonだけで、その他のSIGMAやTAMRONといったレンズメーカーがCanonのカメラ向けに発売するAPS-C用レンズはEF-Sマウントではなく、通常のEFマウントとしてフルサイズのカメラにも装着することができます

APS-C用レンズをフルサイズ機で使いたい理由

多くの人に当てはまることでしょうが、筆者が初めての一眼レフカメラとして購入したカメラはAPS-Cのセンサーを搭載したものでした。初心者がいきなり高価で重厚なフルサイズ機を選ぶことは稀だと思います。APS-Cの愛機に合わせてなるべく安価で高品質なレンズを選んで買い集めていたらいつの間にかAPS-C用のレンズが手元にたくさん…というのはよくある話です。こうなると、憧れのフルサイズ機が欲しくても、手元のレンズ資産は全て無駄になってしまい、フルサイズ用のレンズを新たに買い集めなければならない状況になります。ここで筆者は、APS-C用のレンズもなんとかフルサイズ機で使えればいいな〜と思った訳です。

光学ズームすればケラレない

簡単な話ですが、ズームレンズのほとんどは少し光学ズームしてあげればフルサイズ機でもケラレずに使用できます。広角端の焦点距離を1.6倍したあたりまで光学ズームすればAPS-Cでの広角端とほぼ同じ画角で撮影できるはずです。筆者の手元のレンズではTamron10-24mmやTokina11-16mmが光学ズームすることでフルサイズ機でもケラレずに使用することができました。

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Tokina116をEOS Rに装着して撮影(望遠端)

この際、F値やフォーカスの距離によっては上の画像のように四隅がケラレてしまいます。EOS RではMENU>レンズ光学補正>周辺綱領補正をOFFにすることでこのケラレを防ぐことができます。

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設定後はケラレない

単焦点レンズやズーム倍率の低いレンズ、後玉が特殊な構造になっているレンズなどではこの方法は使用できません

RFマウントとは

フルサイズミラーレス機であるEOS Rとともに登場したのが、EFの次世代のマウントとなるRFマウントです。EFよりもフランジバックが短く設計されており、マウントアダプターを装着することで従来のEF/EF-SのレンズもRFマウントに装着することが可能になっています。ここでひとつ疑問が生じるはずです。RFマウントは(現時点では)フルサイズ機用のマウントなのになぜAPS-C機にしか装着できないEF-Sレンズが装着できるのか。それを解決するのが、EOS Rシリーズのある機能です。

おすすめのアダプター

1.6倍クロップ(APS-Cモード)

EOS Rシリーズには1.6倍クロップという機能が備わっており、この機能を使用するとフルサイズの画角に対して中央のAPS-C相当の画角の部分だけが撮影されます。

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フルサイズモードとクロップモードの比較(Tokina116広角端・EOS R)

通常6720*4480のところ、4200*2800で保存されます。このモードにより、レンズに表記された焦点距離の1.6倍の画角が得られるため、手軽に望遠効果が得られるという触れ込みの機能です。筆者としては、クロップはあとでLightroomやPhotoshopでもできるのだから、RAWはフルサイズの画角のデータも保存しておいて欲しいと思うのですが、結構評判の良い機能のようです。

EF-SレンズをEOS Rに装着すると

ここからがこの記事の本題です。EF-Sレンズをマウントアダプタを介してEOS Rに装着すると、強制的に1.6倍クロップが有効になり、オフにすることはできません

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クロップの設定の部分が無効化され1.6倍に固定されている(EF-S18-55mm・EOS R)

ですので、EF-SレンズではEOS Rの最大解像度である3030万画素で撮影することは不可能です。少しズームリングを回せばクロップしなくてもケラレることなく撮影することが可能なはずですが、EOS Rでは仕様としてそのような使用方法は許されていません。

非EF-SなAPS-C用のレンズだと

ややこしいですが非EF-SなAPS-C用のレンズ、すなわちSIGMAやTAMRONといったレンズメーカーから発売されているAPS-C 用のレンズをEOS Rに装着するとどうなるのでしょうか。手元にあるTAMRON10-24mm、Tokina11-16mm、SIGMA Art 30mmで試したところ全てクロップされずに撮影できました。前述したように光学ズームする裏ワザでケラレずに撮影することが可能という訳です。

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サード製のレンズでは強制クロップにならない

 

しかし、このうちTAMRON10-24mm、SIGMA Art 30mmはレンズ自体にファームウェアがあり、専用の機器を通じてアップデートすることが可能となっています。リリースノートを読んだところ、両レンズに向けてEOS Rへの対応としてアップデートがリリースされていることがわかりました。両メーカーにその仕様を確認したところ、ファームウェアアップデート後は強制クロップが有効になるとの返答が返ってきました。各メーカーの間ではAPS-C用レンズはクロップでケラレを解消するべきという見解で一致しているようです。

したがってレンズメーカ製のAPS-Cレンズについては、EOS Rの登場以前に製造されていたレンズは最新ファームウェアで強制クロップが有効になり、EOS Rの登場後に製造された物については全て強制クロップが有効になると考えて良さそうです。

レンズのファームウェアアップデートは自分で専用の機器に接続して行うか、メーカーのサポートに送るか持ち込むことで行うものとなっています。メーカーによるレンズの修理やメンテナンスのタイミングでもアップデートされると思われますので注意が必要です。

まとめ 1.6倍クロップは悪者なのか

ここまでクロップ機能がさも悪者かのように書き連ねてきましたが、クロップ機能自体はほとんどの人にとってケラレること無くAPS-Cのレンズ資産を活かしてくれる便利な機能なはずです。画素が損なわれると言ってもクロップ後の解像度は4200*2800ですから十分高解像度と言えます。ほとんどの用途では十分な画素数です。折角フルサイズ機が利用できるのならフルサイズセンサー全体で撮影したいと考えてこのような記事を書きましたが、そういう強いこだわりを持つ方はフルサイズ用のレンズを購入するべきです。そもそもこの記事で紹介したような裏ワザはレンズメーカーに想定されていないので、レンズの光学性能が十分に発揮されない可能性があるためです。

しかしながら、安価なAPS-Cレンズをフルサイズ機で利用する裏ワザというのは夢のある話です。CanonのAPS-Cの一眼レフカメラからEOS Rシリーズに買い替えを検討している方は是非参考にしてください。

 

おまけ SIGMA Art 30mm f1.4について

SIGMA Art 30mm f1.4はAPS-C用の単焦点レンズで、当然光学ズームすることはできないので前述の裏ワザには当てはまらないのですが、なぜかフルサイズでもケラレること無く撮影できます。かなり強い周辺減光がかかってしまいますが、違和感なく補正することは可能です。

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EOS R フルサイズ/EOS R クロップ/EOS 9000D(APS-C)

 

参考

www.fantastia.com

この際、クロップせずにF値を開放付近に設定するとグレーの何かが映り込みます。

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これが何なのかはよくわかりませんが(わかる方はコメントで教えてください)、EOS R本体の設定を見直すことで消すことができます。

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このように、APS-C用と銘打っておきながらイメージサークルに余裕のある設計となっているレンズは他にもあるかもしれません。APS-C用のレンズ資産を抱えている方は一度試してみると良いと思います。

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